2008年04月23日

Fiction 32

記者会見に、真剣に耳を傾けていた。

あまりにもすばらしくて涙が出た。
彼にとっての、9年という歳月が、
いかに険しいものだったかを物語っていた。

見当違いを通り越して怒りすら覚える質問に、
簡潔に、明瞭に、正確に、答えていく。
その知識は、普通に生きていれば必要のないものだ。
間髪入れずに完璧に反応していくその姿は、
本来生まれ得ない、彼だ。

そこにあるべきだった、時間と、家族。
報われる時は、来るのだろうか。
手に入れたすべては、失ったすべてのためのものだ。
元には戻らない、すべてのための。


暗き空へと消え行きぬ
わが若き日を燃えし希望は。

夏の夜の星の如くは今もなほ
遐きみ空に見え隠る、今もなほ。

暗き空へと消えゆきぬ
わが若き日の夢は希望は。

今はた此処に打伏して
獣の如くは、暗き思ひす。

そが暗き思ひいつの日
晴れんとの知るよしなくて、

溺れたる夜の海より
空の月、望むが如し。

その浪はあまりに深く
その月はあまりに清く、

あはれわが若き日を燃えし希望の
今ははや暗き空へと消え行きぬ。

中原中也 - 失せし希望



Badly Drawn Boy - Year Of The Rat
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posted by No Sun. at 21:17| Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする